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前回はいくつかの異常な思考状態をパーソナルコンピューター(PC)の不調に例えて説明しました。
PCは長年使用しているとメモリが一杯になったり、処理反応がゆっくりになる場合があります。
これと類似したイメージで、年齢を重ねた結果、記憶を含めた脳の働きが衰える変化が起きることがあります。
前記の変化が進み症状となる代表的な病気が認知症です。内臓としての脳が加齢によって変化した結果、記憶障害を中心症状として時に感情・行動面にも種々の精神的不調を伴って症状が出現します。ただ、記憶障害がある状態のすべてが認知症と診断されるわけではありません。
例えば高齢者のうつにおいても、覚えられない・理解力が著しく落ちた…などの表現で記憶低下が目立つことがあり、「仮性認知症」と呼ばれます。この状態になると一見認知症になったように自身も周りも感じますが、症状の現れ方には認知症と異なる点があります。最も大きな差異は、自分自身の記憶障害についての捉え方です。
認知症では、物忘れなどについて質問された際に、症状を軽く表現される、あるいは否定されがちであるのに対し、高齢者のうつでは逆に「全て分からなくなって何もできない」などと症状を大きく表現されることが多いです。
改善策としては、認知症には症状進行を遅らせる抗認知症薬を、高齢者のうつには抗うつ剤をそれぞれ投与することになり、診断によって治療薬が変わってくるため鑑別が必要です。ただし、認知症の症状の一部としてうつ状態が出現することもあり、両者の区別が困難なケースもあります。