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認知症の検査には、問診で質問に回答して行うものと、画像で評価されるものとがあります。
日付や場所を答える・簡単な計算をする・いくつかの言葉を覚えて思い出す…などの言葉での回答から、指定された時刻の時計盤の絵を描く・立方体や重なった図形を描き写す・文章を考えて書く…といった描画や書字をしてもらったり、あるいは「手紙を封筒に入れて投函できるような状態を作る」「質問する人の動きを真似たり指示された通りの動作をしてもらう」…等の行動面まで、さまざまな側面での検査により多角的に評価をします。点数で結果が出るなど一定の客観性はありますが、受ける人のその時の気分ややる気・体調などによって影響されることがあるため、絶対的な評価にはなりません。
画像で見える検査としては、頭のCTやMRIがあります。脳が縮んでいたり梗塞を起こしているなどの状態が脳の断面の形で分かるものです。その他、脳の血の巡りが分かるSPECT(スペクト)なども併せて行われることがあります。いずれも検出される異常によっては認知症の特徴が視覚ではっきりするため、有力な検査となります。ただ、検査で異常があっても症状は殆どなかったり、逆に症状が重いのに検査では異常が目立たなかったりするなど、必ずしも症状と画像異常の程度が一致しない場合もあるため、画像の異常=認知症とはなりません。むしろ脳梗塞や脳出血、脳腫瘍といった身体治療が必要とされる疾患の有無判定に有用な側面があります。
これらの検査を補助情報として、問診で得た症状の内容と程度に関する診療情報と併せて、総合的に診断をすることになります。
以上のような検査判定を経て認知症と診断された場合、医療機関では必要に応じて薬物治療が行われます。認知症の中核症状に対して処方される薬は、主に認知症の進行を遅くするのが効果とされており、認知症になった人を病気になる前の状態まで改善する力はありません。症状の進行を遅らせることで、病気が重くない期間を延長し生活水準を維持することが実質的な効果となります。また、前回述べました「認知症の行動と心理的症状」が強ければ、各症状について対症薬を追加して用いることもあります。抗精神病剤、抗うつ剤や漢方薬などが適宜に使われますが、高齢の方の内服に際しては眠気・ふらつきや転倒によるけがなどの副作用に注意が必要です。
みなともクリニック 院長 南智久