各線・天王寺駅すぐ あべのハルカス22F
20歳代などの若い人が「物忘れがひどくて仕事での失敗が多い」と受診されることがあります。
前回までの認知症も低いながら可能性はあり否定できませんが、それとは別の状態である可能性があります。
経過の一例としてあるのが「今Aという仕事をしているところに誰かから声を掛けられてBという作業をついでに頼まれると、仕事Aは無かったように忘れてBに掛かりきりになる。
作業Bについて書類を調べているうちにCという会議記録が出て来てそれを読みだすと、今度はBの作業も途中で止まってしまう。
更に横で他の人達がDの件について話しているとそれに気を取られて会話に加わってしまい、それまでしていたどの作業も途中で止まったままで、長時間経っても進まない」というものです。
きちんとしなければ…という気持ちはあり自分なりに失敗しないようにと努力もするのに、失念やケアレスミスを繰り返してしまい仕事を含む社会活動に支障が出ます。
「忘れる」という言葉で表現されることがあるため認知症のような状態を疑われて受診に至る場合がありますが、実際は必要なだけの注意や集中が保ち続けられないことで前の活動が後の活動によって「上書きされた」ように見えるのが本態であり、認知症とは異なる状態です。
認知症に対して行うような記憶の検査や、脳のMRI検査などでは異常が出ません。
このような場合に疑われるのが「注意欠如・多動症(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder;AD/HD)」です。この診断名では「不注意」「多動性」「衝動性」の3つが主な特性とされます。
具体的には「不注意」は気が散りやすい・忘れっぽくて失くし物が多い・ミスが多く指摘されても繰り返してしまう、「多動性」は、せっかち・じっとしていられず落ち着きがない、「衝動性」は順番を待てない・相手の話を最後まで聞けない・深く考えずに発言したり動いてしまう…といった状態です。
これらの特性が幼少時から10歳代にかけて目立ち成人してからも続くために、学校や職場、家庭などの各場面で困るようになります。
みなともクリニック 院長 南智久