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対人関係で辛さを感じるのは発達障害の当人だけではありません。
身近な人において、発達障害傾向がある相手に気持ちが伝わらない・考えが分かってもらえないなどの状態が続くと、その人々も不満・ストレスを溜めやすくなり不安定な精神状態に陥ることがあります。
例えば発達障害特性がある男性をパートナーにもつ配偶者は、
「家庭での役割をどう果たしたら良いか分からない」
「妻が日々こなしている家事の大変さが理解できない」
「子供とのコミュニケーションの取り方が分からない」
「子育てに興味がわかない」
「自分のルールを優先しようとする」
などの状態である夫と、家族でありながら情緒的な交流が持てず悩むことになります。
ですがPDDの人は得意な領域や、ルール・活動内容が決まっている仕事などについては人並み以上にできることも多く、家庭外では一見真面目で問題がなさそうな夫と映る場合があります。
すると妻が「生活の悩みをちゃんと理解してもらえない」
「自分が期待するように子育てを手伝ってもらえない」
などと知人や友人に相談しても、
「きちんとしたご主人なのにどこが不満?」
「それは妻が我慢しないと仕方がないことでしょう」
などと解釈されてしまう、あるいは(夫に理解が無い妻と思われるのではないか?)と気にして誰にも打ち明けられない…などの状態から、孤立感が増す結果となります。
このように、身近な人がPDDであるために生活活動やコミュニケーションが制限されているのに外部の人には共感や理解が得られず、孤独感や不全感が強まる状態が「カサンドラ症候群」と呼ばれます。
“カサンドラ”とはギリシャ神話に出てくるトロイ王女の名前から由来しています。
太陽神アポロンに愛されたカサンドラはアポロンから予知能力を与えられるが、その能力によりアポロンの愛が冷める未来を予見してしまい、アポロンを拒絶します。
それに怒ったアポロンが「カサンドラの予言を誰も信じない」という呪いをかけたため、カサンドラは皆から信じられないまま非業の死をとげた…という物語があります。
カサンドラ症候群は正式な診断用語ではありませんが、周囲に家族の内情を分かってもらえず心理的に孤立している妻の状態を、予知能力により真実を知っているのにそれを信じてもらえなかったカサンドラに例えて名づけられているものです。
みなともクリニック 院長 南智久