各線・天王寺駅すぐ あべのハルカス22F
2020年2月号
前々回のカサンドラ症候群のように「発達障害特性が家庭不和の原因になる場合がある」という解釈は障害が社会に広く認知されつつある表れともとれますが、パートナー間のコミュニケーションの問題を発達障害だけに帰着させるには無理がある場合もあり、正しい見極めと対処が必要です。
家事や子育てについて分担が決まっていない場合、相手の大変さが理解しにくい、あるいは手伝おうという発想が乏しいことから、パートナーが家庭でどんなに忙しく立ち働いていても自分は何をしたらいいのか分からない、あるいは「最終的に相手一人でやれているから大丈夫だろう」と思って寝転がってテレビを見ていたりします。そんな傍から見ると思いやりのないようなパートナーの態度・行動に対し相手は腹を立てて、いさかいになります。自分に悪気が無かったとしても、パートナーにとっては家庭生活における大きな問題となるのです。
相手に発達障害傾向がある場合にはその特性を理解したうえで、例えば行ってほしいことを言葉で明らかにして伝える必要があります。ただ、「自分のことを否定された」「マイナス評価をされている」と感じると相手を敵視し言われる事柄を文句や非難であると捉えがちになるため、面と向かって「~してはいけないに決まってるでしょ!」「そんなことも分からないの?」などと決めつけるような言い方は控え、感情的な責め方を避けるようにします。
また、表情を読んだり気持ちを想像することが苦手な面もあるため、話し合う際には一対一で向き合うよりも横に並び説明の対象を一緒に見る形で接し、予定表や図を使い視覚に訴えるなど分かりやすい説明を工夫すると誤解されにくく受け容れやすいです。そのうえでお互いの役割内容や活動の時間を数字等ではっきりと決め、家事・育児などを日常生活の中でパターン化された作業にすると良いでしょう。
論理的な思考傾向があり、目的が明確で自身にメリットがあると理解できれば進んで行動する面もあるので、パートナーと良い関係を築くことが社会的評価の向上につながると説明したり、「~した方があなたの得になる」などと伝えて自ら行動するよう誘導するのも方法です。
互いに責めあっても解決しないもので、相手を理解し歩み寄る意識を持ち、改善策を共に模索することができれば理想です。
みなともクリニック 院長 南智久