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2020年3月号
能力が高く勤労意欲もあるのに、発達障害傾向から場の空気を読んだり状況変化に対応することが苦手なために職場不適応が目立つことがあります。
原因としては、対人でのコミュニケーションをとる技術が十分ではなくトラブルになって就労継続ができない、あるいは業務内容が自身の特性に合っていないため仕事が続かない…などが多いようです。
失敗やつまずきの繰り返しから気持ちが落ち込んだりして精神的に不安定になることもあるので、対応する職場側には注意と工夫が必要です。
「これくらいは言わなくても察して自分からするだろう」と思われる事柄でも期待されるようには行えないことがあり、周囲はそれを理解したうえで逐一の指示を要する場合があります。指示の声掛けについても、言外の意味を含む言葉などは理解しにくく混乱する可能性があるので「きちんと」「ちょっと」といった抽象的な表現やおおまかな程度を表す言葉は避け、具体的な内容をより端的に分かりやすく伝えるようにします。
例えば「遅れないように集合場所に来なさい」ではなく「何時にどこそこまで来なさい」へ、あるいは「頑張って早くやりなさい」ではなく「説明文に書かれた内容の通りAとBをいついつまでに終わるようにしなさい」へ等、客観性を意識して表現すると良いでしょう。
特性については批判的な見方をせず個性と解釈し、強みを見出して適所で働けることが理想ですので、「何ができて何ができにくいか」を把握してより得意で適した内容の業務を振り分けるようにします。できない側面より長所を意識するよう誘導し、困難の克服よりも得意分野を生かす方が実際的です。
また、自分が正しいと決めた事柄については周囲の評価を気にせず考えを変えにくい場合もあるため、相談が必要であれば気持ちを押し付けず感情を排して事実と対策について論理的に話し合うと良いです。話す際にも共通の興味・話題をストックしておき、それを端緒の話題として興味を引き付けてから目的・結論を先に述べ、次に詳細を話す…といった話法も工夫となるでしょう。
また対人コミュニケーションにおいて負担が大きい場合、業務外の活動においては周囲に無理に合わせないでも良いように許容する観点から、職場の行事ではあるが業務に直接関係しないような集まりなどには参加しないでも可としたり、昼食時の雑談が苦手であれば職場の空室などで単独での食事を摂っても良いとする…などの配慮をしてみます。
できない仕事を無理に任せてトラブルになれば会社にとっても利益にはならないため、特性がある人でも職場にどのようにうまく受け入れてともに働くか?を意識し、より良い対応策をともに模索していくことが理想です。
みなともクリニック 院長 南智久