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2020年5月号
就労時には職場側に特性を理解してもらうだけでなく、自分でも自身の傾向をできるだけ把握する工夫をしたうえでより自分に適した仕事を選びたいものです。
工夫の例としては幼い頃から好きだったことや夢中になったことを振り返り具体的に書き出してみるなどして興味対象を明確にし、その中から仕事にできそうなものを拾い上げてみます。
自分で分からなければ身近な人に尋ねるのも良いでしょう。自己の強みを発揮できる分野がはっきりすれば就労に関する相談や決定がしやすくなります。
得意なことと苦手なことの差が大きい場合、不得意なことを克服するよりも得意なことに集中した方が成果を出せる可能性があるため、得意分野を伸ばして不得意な面を補うのも方法です。
自身を顧みて「~は苦手だが、~は得意」など自己理解を深めることで、より自分に合った業務を遂行できれば「目標が達成できた」という成功体験と周囲の承認・賞賛が得られ、その結果「自分もできる」という自己肯定感が強まると就業が継続しやすくなります。
「発達障害だから」等と診断名にとらわれた画一的な見方をせず、一般的な障害特性と個々人特有の特性の両方を知り比較しながら、できるだけ得意な事柄を見つけ出すようにします。
また、関係機関や制度によるサービスも利用が可能です。関係機関としては各地にハローワークや発達障害者支援センター、就労移行支援などのさまざまな支援機関が整備されており、専門的な知識がある職員に就労相談をしたり職業リハビリテーションを受けることができます。
そこでは履歴書などの書類作成や面接に関する指導、職業訓練、特性に合った職種の紹介といった、就業に必要なスキルを身に付けるための援助が得られることがあるので、積極的に活用するようにします。
雇用制度で関係するものとしては「障害者雇用率制度」があります。
これは企業に対し一定以上の障害者を雇用する義務を定めたもので、状態によってはこの制度のもと障害者枠での就労を試みるのも手段となるでしょう。
長所短所・得意不得意は誰にもあるもので、どんな人でもその人にしか果たせない社会的役割が必ずあるものです。障害の有無に関わらず特性の多様性を認め、共生できるような社会が理想です。
みなともクリニック 院長 南智久