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2020年6月号
新型コロナウイルスの感染蔓延がなかなか収束しない昨今の情勢にあって、どのような業種も就業状況が大きく変化することを余儀なくされています。業務形態変化・業績悪化に伴い労働における心理的な負荷は平常時よりも格段に増していることと思われます。が、それ以前からウイルス流行とは関わりなく就労すること自体がもともとストレスフルな活動であった、という方も少なくないでしょう。
仕事は多くの人々にとって一日の大半の時間を占める活動と対人交流の場で、暮らしの糧のみならず自己実現や生きがいを得る場でもあります。しかし一方では活動場所と時間、人間関係や感情面など、様々な側面で制約をもたらす要因となる恐れも含んでいます。
過重労働や乏しい自己裁量権、上長や同僚との人間関係の軋轢、組織内外での競争など、程度に差があっても様々なストレスはどこの職場にも存在し、そこから完全に逃れることは現実には困難です。
2018年の厚生労働省によるストレスに関する質問では、労働者のうち約58%が「仕事や職業生活に関して強い不安、悩み、ストレスを感じている」と回答したとされています。
また、疾病休業による労働力損失(労働保障給付額)が約460億円・自殺による労働力損失が約7000億円(平成22年度障碍者総合福祉推進事業報告書より)…などの経済調査結果から、生産性の維持には職場のメンタルヘルス改善が欠かせない、と推測されています。
また、経済産業省が推進する考え方に「健康経営」があります。これは経営的視点から考え健康管理を実践するもので、労働者の健康保持・増進への取り組みが将来的な収益性を高めるとするものです。
不健康による休業者・失業者を減少させることが労働生産性の向上をもたらし、働き方改革が目指すところのひとつである労働力不足の解消にも寄与するとされます。
これらのことから、労働に関わるメンタルヘルス問題の解決について企業が積極的に取り組むこと、および職場環境での精神的な負荷による悪影響を軽減するため就業ストレスの程度を測定することが、以前からメンタルヘルス対策として重要であるとされてきました。
みなともクリニック 院長 南智久