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2020年10月号
ストレスチェック制度はチェックのみで完結するものではありません。ストレスチェック受検段階およびその後の面接指導の各過程において、個々の労働者に「ストレスへの気付き」を促すことが大きな目的です。
職場はチェックを入り口として、労働者のメンタルヘルス向上のための体制を構築する目的意識を持つ必要があります。
まずは制度の意義を労働者に十分に説明し、労働者にとって有意義な制度であるとの理解を得ることが大切です。理解されないと労働者が回答するモチベーションを持てないままに終わってしまいます。
また、ストレスチェック検査が各自で回答を記入する形式(自記式)であり、受検者が正直に回答しないと機能しないという限界もあります。
たとえば本当に悩んでいる人が真の回答をせずに、配置転換を希望したり不満を持つ人が積極的な回答をするかもしれません。また、職場での人間関係が悪いため配置転換を期待し積極的に高得点を示して面接を申し出ようとする可能性や、逆にうつ状態になりつつあるが自身が休業することによる周囲への迷惑を懸念して、不調を過少申告することも想定されます。
このような不正確なチェック結果を減らすためには「ストレス状況を定期的に把握しメンタル不調を防止することによって、労働者の精神的健康増進・企業の生産向上を得る」という制度目標を、労働者に十分に周知理解してもらう必要があるのです。
同時に「正直に回答しても大丈夫か?」「チェックの結果を会社に知られてしまわないか?」「結果が悪かった場合に人事上で不利益な扱いを受けないか?」などの心配について、職場は労働者の懸念を払拭できるように十分なコミュニケーションを取っていくことが重要となります。
また、労働者側もストレス環境や不調について職場に配慮を求めたいならば、シグナルをあらかじめ発しておく必要があります。チェックを受け、ストレスが高い結果であれば医師面接を希望し相談をする…というステップを踏み、コンディション悪化の兆しを適切な時機に発信しておけば、職場にも対処する義務が生じます。
メンタル面に限らず健康管理はプライバシーと配慮が対立する側面があり、どちらかを優先すれば他方がある程度制限される場合もあるでしょう。各人にとっての利益・不利益をしっかり確認したうえで、受検を決めたいものです。
みなともクリニック 院長 南智久