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2020年12月号
「事業所は必要に応じて労働者に対し作業転換・労働時間短縮・その他の適切な就業上の措置を講じなければならない」と定められており、高ストレス者が希望する場合には医師の面接を行うことが義務付けられています。
これにより、高ストレスと評価された労働者から面接指導を受ける申し出があった場合、職場には遅滞なく(概ね1ヵ月以内)面接指導を行う義務があります。
面接指導は職場の産業医でかつメンタルヘルスに関する知識・治療技術を有する医師に委託されます。
面接は原則として勤務時間内に行われ、医療機関での受診とは異なるため発生する費用は職場が負担するものです。
特に重要なのは、高リスク者であるのに面接指導を申し出ない労働者への対応です。
例えば上司との人間関係で悩んでストレスが高くなっている場合には、人事考課等への影響を気にして面談を敢えて申し込まないかもしれません。
面接指導は制度上義務化されていませんが、こういったケースこそ積極的な介入が必要であるはずです。が、実際には産業医が実施者でなければ面接担当者さえも原則は情報を知ることができない制度設計であるため、どのようにフォローするかが問題になります。また、医師による面接を希望した場合、個人結果の職場への提供に同意をしたとみなされるため、自分のチェック結果が職場に知られてもなお医師面接を受けて仕事上の措置を望む…という労働者がどれぐらいいるのか?という問題もあります。
「ストレスがある=即メンタル不調が出る」とは限らないため、ストレスチェックにより高ストレスと判定されてもすぐには病的な状態にならないなど、多くの労働者は健康な様子のままで就業を続けているかもしれません。
しかし、予防観点からは面接が必要と判定される程度のストレスを受けている人がメンタル不調に陥らないよう、本人自らが希望した際には気軽に面接指導を受けられる…という体制や雰囲気を作ることが重要です。
前述のとおり人事評価や労使関係を考えて面接を控える労働者が少なくない可能性もあるため、高ストレス者の面接を強制はしないが積極的に勧奨する工夫が行われないと、本当の意味で制度が機能しない恐れがあります。
みなともクリニック 院長 南智久