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2021年1月号
チェック結果に関する集団ごとの集計・分析は、事業者の努力義務とされています。
ストレスチェックの主な目的はセルフケアですが、それを進めるにあたり事業者は個人の所属する部署の環境改善に努めることが必要です。
ストレスチェックの結果を個人に通知するだけでなく集団へのアプローチとして部署単位で集計分析することにより、高ストレスの従業員が多い部署が分かるなど改善対象が明らかになります。
ですが、分析結果の共有と活用は慎重に行う必要があります。
職場が高ストレス者の多い部署を管理する職員に対して不適切な指導をした場合には弊害が生じることもあります。
例えば、呼び出され悪い評価を受けた管理者が、職場で「なぜそんな回答をした」等と部下を責めるかもしれません。その結果、次回以降のチェックでは誰も本音で答えなくなり、本来最も改善が必要な部署が、チェックの結果では一番良好な職場として表示されてしまう…ということが起こり得ます。
このような事態を防ぐため、集団分析結果の運用には注意配慮が求められるのです。
情報共有・利用方法が十分に定まっていないのであれば、実施初年度は部署毎の結果を各部門長には敢えてフィードバックをせず、集団分析については次年度以降に持ち越すのも良いかもしれません。
なお、集団を小さくすると個人が特定しやすくなってしまうため、集団規模が10人未満である場合は受検者全員の同意がなければ結果の提供を受けてはならないとされています。
職場のメンタルヘルス不調への対応は各企業で千差万別です。
一次予防の重要度を認識し既に工夫対処をしてメンタルヘルスケアの向上に取り組んでいる先進的な企業もあれば、未だに「メンタル不調は気の持ちようで何とかなるもの」としてストレス管理を職員個人に任せる企業風土の企業もあります。メンタルヘルス対策を推進する活動を行っても、実際には社内に培われてきた慣習には変化が生じにくいことも多いでしょう。
法制化されたストレスチェック制度が、企業の行動変容につながるきっかけになると期待したいところです。
みなともクリニック 院長 南智久